鬼ザラ糖ブランドサイト
リニューアル記念
特別インタビュー
〜 前書き 〜
当サイトのリニューアルを記念し、東京製菓学校校長の梶山浩司先生にインタビューをお願いしました。
30年以上にわたり鬼ザラ糖をご愛用いただいている梶山先生は、技術者としても教育者としても和菓子業界を牽引してこられた第一人者です。職人や工場長としての経験を経て東京製菓学校の校長に就任し、令和4年には「現代の名工」に認定、令和7年秋の叙勲では「黄綬褒章」を受章されるなど、和菓子界の第一線で活躍し続けておられます。今回のインタビューでは、鬼ザラ糖の特性を最大限に活かすための工夫や、現場で求められる技術的視点について、専門家ならではの見解を詳しく語っていただきました。ぜひご一読ください。

学校法人 東京綜合食品学園 専門学校 東京製菓学校
梶山 浩司 (かじやま こうじ) 校長
鬼ザラ糖との出会い
餡子と鬼ザラ糖
鬼ザラ糖との出会いは、今から30年以上前にさかのぼります。きっかけは、東京製菓学校の卒業生から「とてもおいしい砂糖がある」と教えてもらったことでした。われわれ菓子職人は「おいしい」という言葉に弱いですから、早速どら焼き(どら焼き用の粒餡)で試してみたところ、驚きました。言葉で説明するのは難しいのですが、甘さが綺麗といったらよいのでしょうか、とにかくおいしい餡子だったのです。
餡づくりには「100人いれば100通りの炊き方がある」と言われます。たとえば、一般的な和菓子屋では、砂糖の粒が餡練り機の銅鍋を傷つけないよう糖蜜にしてから投入しますが、私は水を多めに使って小豆を茹で、炊き上げた豆に鬼ザラ糖を粒のまま加えています。餡の中に砂糖がしっかり入るまで約5時間かかると言われていますので、それだけの時間漬けていれば鬼ザラ糖の粒も十分溶けきります。その後、豆を取り出し、糖蜜を煮詰めて濃度を上げ、豆を戻して仕上げていきます。


溶かして蜜にしてから使うか、粒のまま投入してじっくり溶かすかで、餡子の仕上がりは大きく変わりますが、どのような製法であっても、鬼ザラ糖そのものの美味しさが餡子の味を底上げしてくれます。鬼ザラ糖は「素材の風味を損なわない」と言われることが多いそうですが、私はそういった控えめな面だけでなく、鬼ザラ糖自体が「すっきりした、いやみのない美味しさを持っている」面を評価しています。その美味しさに、素材の味を引き立てる力がある、と感じるのです。
最近は、お菓子の評価で「甘くなくて美味しい」という表現を耳にするようになりました。お菓子は甘いものなので、やや矛盾した言い方に思えますが、これはおそらく、「甘さがすっきりしている」「ただ甘いだけでなく旨味を感じる」といった甘味の質、つまり砂糖の味の違いに関わる話です。実際に食べてみればわかりますが、グラニュー糖と鬼ザラ糖はもちろん、普通の白ザラ糖と鬼ザラ糖でも味は異なります。その差を軽視してしまえば、お菓子づくりの本質を見失ってしまいます。プロの世界では、このわずかな差が価値を生むからです。
鬼ザラ糖を技術者の頭に
「インプットする」
日本は砂糖の種類が多く、それぞれに特徴があります。鬼ザラ糖は分蜜糖の特徴を極限まで伸ばした砂糖で、その対極には黒糖やきび砂糖などがあります。砂糖にはそれだけ種類があるのだから、職人にはたくさんある砂糖の中で、鬼ザラ糖のポジションをしっかり頭にインプットして、「こういう時はこれだ」というふうに使い分けてほしいんです。そういった素材のインプットをしていかなければ、その人のお菓子の可能性は広がっていかないと思います。
餡子に関しては、基本的にグラニュー糖よりショ糖純度の高いものを使用しますので、グラニュー糖からグレードを上げる場合は白ザラ糖に、さらに白ザラ糖の中で最も高品質なものを求める場合は鬼ザラ糖に、という選び方をします。一方、焼き菓子の生地や饅頭の生地など、溶けにくさが作業性を悪くしてしまうものや、焼き色を付けたいパーツには上白糖を使用します。重要なのは、砂糖の役割を理解し、適材適所で使い分けることです。

図作成 : 岡常商事株式会社
砂糖は、甘味をつけるだけの存在ではありません。たとえば、砂糖の調理特性の一つに「香りを保持する効果」があります。小豆を炊くとき、砂糖を加えたものと水だけで炊いたものを比べると、その差は一目瞭然、香りを逃がさないためには、砂糖をできるだけ早いタイミングで入れることが大切なんです。
この考え方は、柚子やレモンの皮にも応用できます。砂糖をまぶして冷凍すれば香りは飛びませんし、余った皮をすりおろして砂糖と合わせておけば、香りをしっかり保持できます。こうした工夫は、素材の美味しさを最大限に引き出すために欠かせません。
このように、素材の風味を守るための砂糖の特性を理解した上で、柚子ビールのような香りを活かしたい菓子に使うと、鬼ザラ糖は抜群の効果を発揮します。鬼ザラ糖を使いこなすには、前提として「砂糖」というものの調理特性を理解しておくことが欠かせません。
鬼ザラ糖の良さを伝える方法
砂糖のままの状態か、菓子に加工した状態か
技術者に鬼ザラ糖の魅力を伝えるには、まず鬼ザラ糖そのものを味わってもらうことが大切だと思います。お菓子に加工してしまうと、調理過程を経ることで現れる鬼ザラ糖の特徴を表現することはできますが、そのぶん素材や製法の要素が重なり、砂糖自体の違いが分かりにくくなるというデメリットもあります。砂糖の味を知ることは原料の理解にもつながりますし、技術者は砂糖を直接食べて美味しいと感じれば、まずは自分のやり方で、「この砂糖で作ってみよう」と考えるものです。そこから鬼ザラ糖の可能性も開いていくのではないでしょうか。
また、試食の評価は、出し方によって変わることを念頭に置くと良いと思います。過去の例ですが、とある製餡機のPRで餡を試食に出した際、皮の食感など餡の批評に終始してしまい、機械の特長が伝わらなかったということがありました。試食する人が何を評価するかは、状況によって変わります。
鬼ザラ糖の場合、まずはそのままの状態で、鬼ザラ糖そのものの味を知っていただくことが理解への第一歩。そのうえで、調理過程を経て生じる特徴を餡やジャムなどの試食で伝えると良いのではないでしょうか。その段階では、一転して「素材そのものを味わっていただく」ことが重要になってきます。鬼ザラ糖が「素材の風味を生かした美味しさ」を得意としているからです。
レモンを鬼ザラ糖で炊いて比較していただくなら「レモンの風味が美味しい」という評価があれば十分です。技術者向けの試食では、それが砂糖によって美味しくなっているのか、素材自体が美味しいのかは、実はあまり重要ではありません。大切なのは「美味しい」と感じていただくこと。その瞬間に、鬼ザラ糖の価値が伝わります。


鬼ザラ糖も他の白ザラ糖もグラニュー糖も、成分的にはショ糖99.9%以上という点で大きな差はなく、なぜ美味しいのかをデータで示すのは現状難しいということでしたが、幸いなことに、食材の世界では、科学的な裏付けよりも「食べてみたら違った」「使ってみたら変わった」という実感が先行します。鬼ザラ糖も実際に試してもらい、その価値を理解してもらうしかありません。
鬼ザラ糖は、和菓子業界では広く知られ、愛用する技術者も多いお砂糖です。しかし、その美味しさと可能性は、洋菓子の世界ではまだ十分に活かされていません。それが本当にもったいないと感じています。鬼ザラ糖の魅力を、和菓子や洋菓子といった枠を超えて、もっと多くの方に実感していただきたいですね。
綺麗な甘さに仕上がる鬼ザラ糖
鬼ザラ糖は、何に合うというより以前にどんな用途でも味がすっきりして、甘さが綺麗に仕上がるため、この「お菓子には鬼ザラ糖」という制約なく、幅広く普段使いしてきました。
その上で、やはり小豆との相性は抜群に良いと感じています。餡作りは小豆と砂糖と水だけというシンプルな材料だからこそ、小豆の風味を引き立てるのに加え、砂糖自体の味が綺麗で美味しいのは大きな魅力です。
また、私個人としては、お米の風味を生かした餅生地との相性も非常に良いと感じており、こちらはぜひ「鬼ザラ粉糖」をお試しいただきたいと思います。
鬼ザラ糖との相性については、小豆餡、白餡と加工餡、餅生地(羽二重、雪平)、寒天系のお菓子(羊羹、錦玉)、わらび餅、5つの枠でご紹介しています。また、それらを複合的に用いた伝統的な和菓子のレシピも掲載していますので、併せてお役立てください。
